賃上げって何から始めればいいの? ~国の支援策編②~

賃上げって何から始めればいいの? ~国の支援策編②~

1.はじめに

 本記事では、前号に引き続き賃上げに向けた国の支援策をご紹介していきます。

今回のテーマは「助成金」です。「助成金」と聞くと、「補助金と何が違うの?」と感じる方もいらっしゃると思います。そこで本記事では、助成金と補助金の違いから、賃上げに向けて有効な具体的な制度例までを解説していきます。

2.助成金と補助金の違い

助成金と補助金は、いずれも国や地方自治体が企業や個人事業主に対して給付する、原則返還不要の資金のことを言います。お金の流れだけを見ると、どちらも国や行政から企業に向けて給付されるため、そこに大きな違いはないと言えます。しかし、制度設計の段階で両者の間にはいくつかの違いが存在します。ここでは、押さえておきたい違いを2つご紹介します。

①制度の目的

 助成金が「雇用の安定や労働環境の改善」を目的としているのに対し、補助金は「新事業の創出や設備・サービスの導入」を目的としている点に違いがあります。そのため、賃上げに向けた自社の取り組みによって活用する制度を選択する必要があります。

②受給難易度

助成金は要件を満たせば原則受給できますが、補助金は審査があるうえに採択件数に限りがあるため、必ず受給できるとは限りません。そのため、一般的には助成金の方が受給難易度が低いと言われています。

3.賃上げに向けた助成金制度

厚生労働省では、企業のスムーズな賃上げを支援するため、さまざまな助成金を「賃上げ」支援助成金パッケージとして取りまとめています。

本記事では、そのうち2つの助成金についてシチュエーション別にご紹介していきます。

〈シチュエーション①〉

地域別最低賃金が改定され、最賃で雇用していた従業員の賃上げは行ったものの、最賃以上だった従業員の賃上げに手が回らない。

このままでは、最賃以上だった従業員の不満がたまっていく恐れがあり、何とかしたい。

💡ポイント

この場合、最賃以上だった従業員の不満の原因は「自身の給与が上がらないこと」や「将来的な賃上げへの不安」にあります。

この解決に向けては、役職手当や適切な人事評価制度を導入しつつ、会社の賃金規定を明確に説明することが重要となります。また、メンター制度や1on1ミーティングを導入して、従業員の意見を早期に把握する仕組みも効果的でしょう。

●この状況に適した助成金は?

シチュエーション①の場合、『人材確保等支援助成金』が有効な手段として考えられます。本制度のうち、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースでは、下表のとおりの助成制度が設けられています。例えば、先ほどの例のうち「適切な人事制度の導入」と「会社の賃金規定を明確に説明」を実行した場合、合計で80万円の助成金を受け取ることができます。

もちろん、賃金規定の整備など単体での申請も可能であるため、自社にとって取り組みやすい内容で検討してみてはいかがでしょうか。

〈シチュエーション②〉

従業員の高齢化を受けて、手作業など身体的に負担が大きい作業は減らしていきたいが、受注量を減らすわけにもいかない。賃上げの必要性も理解しているが、どこから手をつけたら良いのかがわからない。

💡ポイント

この場合、まずは身体的な負担が大きい業務時間の短縮から始めるのが先決です。極端な話にはなりますが、労働時間を減らして賃金を据え置くだけでも、時給を引き上げる効果があります。

まずは労働時間短縮から時給の引き上げにつなげ、そこから次の一手として給与支給総額の増加に取り組んでいきましょう。

●この状況に適した助成金は?

シチュエーション②の場合、『働き方改革推進支援助成金』が有効な手段として考えられます。本制度の趣旨は、労働時間の削減を目的とした取り組みや設備投資に助成金が出るというものです。制度内の労働時間短縮・年休促進支援コースでは、下表のとおりの助成制度が設けられています。


例えば、先ほどの例の場合は、身体的な負担の大きい作業フローについて、労働時間短縮につながる加工機械などを導入し、その費用の一部に対して助成金を受け取ることが考えられます。

4.まとめ

本記事では、3回にわたって「賃上げって何から始めればいいの?」という疑問に対する基本的な考え方や国の支援策をご紹介しました。賃上げを実現するためには、基本の考え方を念頭に置きながら、支援制度を有効に活用することが重要です。

また、今回ご紹介した補助金や助成金を活用した場合でも、賃上げに伴う費用に比べると支援金額が小さいと感じる方もいらっしゃると思います。しかし、以前ご紹介したように、今後は「補助金・助成金獲得に向けた賃上げ」ではなく「賃上げに向けた補助金・助成金の活用」へと意識を変えていく必要があります。 賃上げが求められる時代だからこそ、自社ではどのような方法で賃上げを実現できるのかを整理し、活用できる支援制度を検討してみてはいかがでしょうか。